出石で蕎麦

私には蕎麦を食うという習慣がない。
あえて蕎麦を食おうという意欲もない。
麺を食いたきゃあラーメンを食えばいい。あっさりしたものが食いたければうどんでいい、うどんで。
どうも蕎麦といえばタンスのにおいのするオバハンや、修学旅行で隔離されて特別料理を食っていた蕎麦アレルギーのT君を思い出したりして、あまり良い印象がない。
しかし出石の蕎麦は美味かった。私の「醤油&味の素かけ日清カップヌードル」に匹敵するほどの完成度の高さであった。
無数に蕎麦屋があったが、どこも美味いのだろう。
蕎麦に関して何も知らないので、それ以外に何の感想もないところが淋しいものである。
出石という町は田舎道の果てに突如現れた、これまた完成度の高い観光地であった。
観光地も多種多様であるが、ここはひとつの特色を中心に、てぐすねひいて造りこんだ「寄ってらっしゃい、見てらっしゃい型」の観光地である。
それ自体がいかんとは言わんが、昔風に造られた新しい土産物屋が立ち並ぶその様は異様に思える。まるで町全体が高速のサービスエリアや道の駅のようで落ち着きがない。なぜ田舎道の果てに「近代的な昔」が必要なのか。私には理解できん。
しかし中心部を少し外れると歴史を感じさせる古い酒蔵や、なんでもない小さな社寺があり、急に良い感じになったりする。
このアンバランスさに私は「現代日本」を見た気がした。
細く長く、そして丹念に煉られた・・・町とは過ぎた時間の名残りを感じさせる場所である。
夕方、山や田畑を見ながらのんびりとドライブしながら帰った。妙に心が安らぎ、あくびを連発してしまったのは、ただの疲れか、それとも時間の渦の中に何かを置いてきたからか。
時計の針を戻して10年前に戻ってみたいと思った。蕎麦の味は今も昔もそう変わらんだろう。
八朔
2007年10月06日 やっぱり日本食







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