雄琴温泉

その土地の印象はと言えば泡にまみれた性欲の聖地。吉原、金津園、中州とくれば、ここ雄琴も外すことはできない。坊ちゃん嬢ちゃんが目を閉じたあと、大の男が闇夜へと滑りゆく街。
観光協会のみなさん、かたじけない。私にはその程度の知識しかありませぬ。
山科から161号線バイパスへ乗っかり、湖西道路を経由して約20分の位置に雄琴はある。しかし今回は特殊浴場の話ではなく、お肌ツルツルの温泉へ出掛けた話である。
自宅から20分。巨人投手陣なら地獄を味わうに値する時間かもしれぬが、私なら缶チューハイ3本目にかかろうかという時間である。とてもじゃないが旅に出る距離ではない。
だが我が両親が何を思ってか年に数回訪れるのが雄琴温泉である。年を重ね入退院を繰り返し、長旅をするのも辛いことではあろうが、休みの度に行くほどでもなかろうというのが私の本音。毎回、宿を変えるために未踏の宿泊施設もない。
今回は非常口の位置から売店のみやげ物の価格まで把握した「湯元館」での宿泊である。
付き添い兼運転手、並びにスペシャルゲストは私である。
自称「人生の旅人」である私ではあるが、所要時間20分の距離に宿泊するとは思いもしなかった。毎日の通勤時間の方が長いではないか。
しかしチョット足を伸ばしたところに宿があり、何が何だか分からぬほど上品な美味いものを食い、琵琶湖の夕景を眺めながら露天風呂につかる。それはそれでいいものである。
傍らで腎臓と膀胱を取り、半ばキカイダーと化したオヤジが笑っている。
夕食後、まるで品評会のようにテーブルに薬を並べているオヤジとオカンがいる。
30分後にはいびきをかいて眠りほうけている二人。
いつの間にやら夜が明け、いつの間にやら家に帰ってきていた。たいした旅行でもないのに持ちきれないほどの土産を抱え、近所へと配り歩く両親。その顔は非常に満足気である。
月曜日、いつものように生活に戻った私ではあるが、今、一際違った旅の余韻に浸りながら缶チューハイを飲んでいる。
旅とはやはり心でするものなのだ。
八朔
2007年06月02日 旅を連想するようなページにしようと思います。







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